「炭酸温泉」が夏の不調を整える。温泉マニアがおすすめするちょっと遠くのアワアワ名湯
全国炭酸泉めぐり
vol.8
MEGLY編集部
はじめまして、永井千晴と申します。
普段は会社員をしながら市井(しせい)の温泉マニアとしてライターなどの活動をしています。これまで浸かった温泉は国内外あわせて500超。ぬるくて新鮮な温泉が大好きです。
本記事では、炭酸と温泉のすてきな関係をご紹介しながら、温泉マニアがうなるほどの“炭酸名湯”をご案内できればと思います。
- プロフィール
永井千晴
1993年生まれ。神奈川県出身。浸かった温泉は国内外500超。著書に『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』(幻冬舎)。
#炭酸と温泉のすてきな関係
みなさんは温泉に対して、“鮮度”を気にしたことがあるでしょうか。
じつは新鮮かどうかというのは、温泉マニアの間では重要なポイント。新鮮でなければ、いくら泉質自慢でも「うーん」と思ってしまいますし、逆に新鮮であれば、シンプルな泉質でも「すばらしい」と評価されます。
鮮度は、源泉が湧いて出た場所から湯船に投入されるまでの距離や時間、または湯船における湯の回転率によって導かれるものです。明確な数字で表せるものではありませんが、多くの温泉マニアは新鮮かどうかを見た目や肌触り、においなどで判断しています。
そして、新鮮であることの指標のひとつが、今回のテーマである「炭酸」。
炭酸成分を含んだ温泉は世界中にいくつも湧いていますが、新鮮でなければアワを感じ取ることはできません。新鮮で適度な温度をもつ炭酸温泉であれば、浸かると肌にアワが付着します。アワがつくのはつまり、新鮮な証拠。これは、炭酸飲料を放っておくと炭酸が抜けてしまうのと同じ原理です。
ちなみに、温度が高いと炭酸は抜けてしまうものなので、だいたい38度以下のぬる湯がアワのつく温泉になりうるのです。
肌にアワがつく炭酸温泉は、鮮度が高く温度も適温で、奇跡のような存在だと思います。私たち温泉マニアも大好きで、「アワがつくかどうか」は温泉の目利きには欠かせないポイントなのです。
炭酸を含んだ温泉は、ぬるい温度ながら血流の促進に効果があるとされています。血流がよくなると、疲労回復、冷え性、腰痛や肩こりなどにもよいと言われています。ぬる湯なので長く浸かれるため、じっくりじわじわ、体に負担をかけずに不調を改善できるはず。
#一度は浸かってみてほしい、新鮮な炭酸温泉
①祖谷温泉(徳島)
四国屈指の名湯で、海外からのお客さんも多く見られる人気宿。高松空港・高知空港から1時間半ほど車を走らせてたどり着けます。
人気の秘密は、ケーブルカーで行く炭酸ぬる湯の絶景露天!
急斜面をケーブルカーで下って、谷底にある温泉へ。ごろごろと音を立てながら運行するさまは、少し緊張しつつも、期待感を高めてくれます。そうして到着した露天風呂には、38.2℃の源泉が滝のように注がれています。湯船に注がれた瞬間から、細やかなアワがふつふつと湧いてきて驚き…!浸かってみると、あっという間に身体中がアワでみっちみちになります。
祖谷温泉は、加水・加温・循環消毒なしの、生まれたて源泉かけ流し。ぬるぬるとろとろとした浴感と、ほんのり香るたまご臭がたまりません。ごうごうと流れる祖谷峡の音と、源泉がどぼとぼ投入される音と相まって、視覚や聴覚のみならず、聴覚までも圧倒される温泉です。
②駒の湯温泉 駒の湯山荘(新潟)
登山客や釣り客から親しまれている、新潟県魚沼市の秘湯・駒の湯温泉 駒の湯山荘。東京から車で3.5時間ほどのアクセスで、都内からの1泊2日旅行にもぴったり。
名前の通り、山荘らしい木造りの素朴さが秘湯感をかりたてます。電気の通らない「ランプの宿」でもあり、デジタルデトックスにもおすすめの宿です。
ここ駒の湯山荘では、バッコンバッコンと注がれる湯量にまず驚かされます。勢いが強すぎて、あっという間に湯が溢れては流れていき、「ああ、もったいない…!」と思ってしまうほどの贅沢さ。
湯量が多ければ湯船の回転率も高くなり、自然と新鮮な状態が保たれます。アワ好きにとっては、湯量も非常に大きなポイントなのです。
浸かってみると、少しひんやり。源泉温度は32℃で夏にぴったりのぬる湯です。とろとろつるつるの湯触りが心地よく、何時間でも浸かっていられそうなすばらしさ。そしてすぐさま体がアワだらけになります。ふんわり鼻をかすめるたまご臭も最高です。秘湯宿に興味のある方はぜひ。
③百沢温泉(青森)
青森県弘前市から20分ほど車を走らせた先にある、山間の小さな温泉地・百沢温泉も、温泉マニアが集う屈指の名湯です。
やや年季を感じるクラシックな湯治施設なので、旅好きの方にこそおすすめしたいところ。
がらりと大浴場に足を踏み入れると、うぐいす色の濁り湯でひたひた満たされた大きな湯船がどーんと設えてあります。祖谷温泉・駒の湯温泉と同様にドバドバーッと勢いよく湯が注がれているのが勇ましくて最高! 成分は濃いめなほうですが、浴感はさっぱりしていてあまり重たさを感じません。泉質は“美肌の湯”と言われる炭酸水素塩泉で、鉄のにおいと塩味とダシっぽさが入り混じっており、きらりと個性が光ります。加えて肌触りはなめらかで、とっても気持ちいい。
なによりこの百沢温泉は、源泉温度45.3℃をかけ流しにしていてそれなりに温度があるにも関わらず、ぴちぴちとアワを感じる温泉なのです。ぬる湯が少し苦手な方でも十分に炭酸を感じられるはず。
百沢温泉は数年前に宿泊をやめ、日帰り入浴のみになってしまったそう。すばらしい温泉なので、なるべく早めに浸かりにいってもらえたら嬉しいです。
#炭酸温泉が、夏の不調を整える
真夏の暑さやきつい冷房によって、体に不調をきたしやすい夏。
炭酸を大量に含む泉質「二酸化炭素泉」には、自律神経不安定症に効果があると言われており、私は夏にぴったりだと考えています。しかし二酸化炭素泉はかなりレア。泉質として二酸化炭素泉ではなくても、アワを感じる炭酸の温泉には似たような効果を期待できるはずです。
人工の炭酸泉を提供している大型スーパー銭湯も多く見かけるようになりました。人工的に作っているので、天然の温泉よりも炭酸が濃いこともあり、近所でまずはお試ししてみるのもいいと思います。
そのうえで個人的には、自然の温泉から肌にアワがまとわりつくことの神秘や感動を味わってもらいたいです。全国的にも数少ない炭酸温泉ですが、ぜひ行ってみてくださいね。
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