40代の男性が、肌診断を体験。年齢を重ねていく肌にはどんな対策が必要?
40代のフリーライター・宮崎智之の「メンズメイクまでの道」
vol.3
MEGLY編集部
「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といったジェンダー観の変化や、K-POPをはじめとした男性アイドルの活躍、職場でのジェンダーバランスの移り変わり、リモートワークの増加……。そういったさまざまな背景を踏まえて、メンズメイクの市場は年々拡大しています。
しかし、「化粧・美容は女性のもの」といった価値観が根強かった時代に青春期を過ごした人たちのなかには、興味はあっても「男性がメイクをする」ことへの抵抗感が拭えない男性もいるのではないでしょうか。フリーライターの宮崎智之さんもその一人。「目の下のクマこそが僕の本体だった」と、コンプレックスを抱えながら人生を過ごして41年。「今こそそのとき」と、昔からメンズメイクに興味を持ちながらも、踏み出しきれなかったその一歩を歩み始める連載が始まることになりました。宮崎さんはメンズメイクを取り入れることができるのか。
連載第3回では、前回対談したビューティディレクター・大出剛士さんからのアドバイスを受け、まずは自身の肌について知るための肌診断を受けることに。果たして肌診断の結果は、美容へ取り組もうとする宮崎さんに、どのような影響をもたらすのでしょうか。
気になる肌のお悩みは? まずはカウンセリングシートをもとに自分の肌や生活習慣と向き合う
肌診断を行なったのは、前回の取材(「40代、これまでほぼ肌のケアをしてこなかった……何から始めればいい?」)からおよそ2ヶ月後。
これまでは、メイクやスキンケアに対する葛藤や悩み、習慣化の難しさを話していた宮崎さんですが、この間、美容に関する日々の行動に変化はあったのでしょうか。
宮崎:この2ヶ月間は目が回るほど忙しい日が続いていて……。シャワーもまともに浴びられないくらいだったんです。なので、MEGLYは時々使っているんですけど、化粧水は今のところ習慣化されていなくて。化粧品を自分で買いに行くこともできていないので、洗顔料や化粧水も、妻のものを使っている状態ですね。あとは煙草を吸いすぎたと思ったとき、たまにビタミンCのカプセルを飲んだりはしています。
今回、肌診断を行うために訪れたのは、Beauty Connection Ginza(※現在は閉館)。エステティシャンなどとして15年以上のキャリアを持つ、宮本光さんにご担当いただきました。
診断前に、まずはカウンセリングシートに気になる肌の悩みやライフスタイル、現在行なっているスキンケアなどを記載。シートをもとにじっくりカウンセリングを行います。自身の肌の気になっている箇所について、「たるみ」「ほうれい線」「シミ/そばかす」「くすみ」「クマ」「キメ」「毛穴の開き/黒ずみ」にチェックした宮崎さん。
宮崎:40歳を超えてから、これまで気になっていなかったたるみが気になり始めました。昔は全体的にもっとキュッと上がっていた気がして。ほうれい線も気になっているというほどではないんですけど、「あるなあ」と思っています。あとは30代後半くらいから目元のシミが目立ち始めました。
クマは子どもの頃からあって、寝不足だと特に目立つんですけど、たくさん寝たからといってなくなるわけでもないんですよね。鼻の毛穴も気になっていて、たまに毛穴の汚れが取れるという洗顔料を使ってはいます。
カウンセリングは続いて生活習慣に移ります。宮崎さんは「睡眠不足」「ストレス過多」「偏った食事」「長時間同じ姿勢」「運動不足」「喫煙」にチェックを入れました。
宮崎:基本的に1日7、8時間は寝ているんですけど、月に2回くらい徹夜することもありますし、睡眠をとる時間帯がばらばらなんです。
あとは運動不足ですね。犬の散歩に行くくらいで、それも忙しいときは妻に任せてしまったりしますし。ほとんど自分の部屋で仕事をしているので、通勤をしている方よりも動いていないと思います。一応いい椅子を使ってはいるんですけど、いい椅子の上でずっと同じ体勢をしていますね。
宮崎さんの肌の状態を知るために使用するのは、VISIAという肌診断器。3つのライトと高精細カメラを使って顔のカラー写真と紫外線写真を撮影し、「シミ」「シワ」「キメむら」「毛穴」「隠れジミ」「ニキビ」の6項目の解析を行います。
化粧水をつけたコットンで顔を拭き取ったあと、VISIAで顔の右側と左側、両方から撮影を行います。
測定開始! シミ、シワ、キメむら、毛穴、隠れジミ、ニキビについてじっくりチェック
撮影した写真を見て「やっぱりクマが気になりますね……」という宮崎さんでしたが、どのような数値が出たのでしょうか。測定したデータをもとに、項目ごとに確認していきます。
宮本:まずは「シミ」です。薄い水色の線で囲われている箇所が今あるシミです。
宮崎:すごい。歯磨きの磨き残しチェックみたいですね。
宮本:同年代比で顔の左側は73%、右側は83%という数値が出ていますね。宮崎さんと同年代の方のシミの平均値が50%という意味で、100%に近いほど同年代の方の平均と比べてシミが少ないと言えます。
宮崎:おお。じゃあ50パーセントより数字が高いということは、肌の状態が平均値よりもいいという結果なんですね。あまり外に出ない職業だからなのかな……。
宮本:1度目の場合は、さっき見ていただいたように同年代比を見ていくとご自身の状態がわかりやすいかと思うのですが、何度か測定されている方は、ご自身のスコアの変化を見ていただけたら。次の項目が「シワ」です。
宮崎:やっぱり目尻に多いですね。
宮本:ただこちらも数値としては同年代の中では少ないです。浅いシワと深いシワがあるのですが、浅いシワも定着すると深いシワになりますので、保湿などによる目の周りのケアが大切になってきます。目の周りは他の部分より皮膚が薄くて乾燥しやすいですし、瞬きは1日に何万回もすると言われていて、目の周りの筋肉の疲労は血流の滞りやクマにもつながるので、目を休めることも大切です。次は「キメ」を見ていきます。……キメ、整っていますね。
宮崎:え、なんでだ⁉︎ 意外と皮膚が強いのかもしれないですね。
宮本:次は「毛穴」です。
宮崎:うわ。こうやって画像で見るとリアルですね(笑)。
宮本:ただ同年代比で見ると、左側75%、右側87%なので、数値としては「毛穴は目立たない」という結果になります。毛穴は数が減ることはないですし、圧倒的に小さくなったりはしないので、これをよりよくしていこうとするならば、毛穴の汚れをケアしたり、喫煙や飲酒を控えたり、規則正しい食事と睡眠をとることが大切になるとは思います。
宮崎:自分ではすごく気になっていたところなので嬉しいです。これからまだ改善できるということですね。
宮本:続いて「隠れジミ」というのが、表層には出ていないけれど、今後現れる可能性のあるシミになります。これが数値的にはよくないですね。
宮崎:紫外線対策をしていないからですかね。野外フェスやバーベキューのように外出時間が長い場合は塗るんですけど、ちょっと買い物に行くくらいだったら塗っていないんです。
宮本:あとは「ニキビ」の項目になるのですが、こちらは数値的にはあまり気にされなくてもいいかなと思います。おそらくニキビはそんなにできないですよね?
宮崎:そうですね。でも自分では菌がいそうな気がしてしまいます(笑)。
宮本:アクネ菌は常在菌なので個人差もあるのですが、例えば、枕カバーやシーツやバスタオルをきちんと変えることでも数値が改善されたりはしますね。
コンプレックスだった肌の悩みも、現状を知ることで前に進めるかも
項目別に見て行った後、これらをもとにした肌年齢を算出。現在41歳の宮崎さんですが、顔の左側は36歳、右側は35歳という結果に。
宮崎:意外な結果ですね! 思っていたよりも肌の状態が若いという結果が出て、びっくりしています。右の肌年齢が左より1歳若いという結果が出ましたけど、それは自分でもなんとなく気づいていたんですよ。だから写真もなるべく右側から写ろうかなと思っていました。
宮本:お部屋の窓がどちらの方角を向いているか、運転をされるかどうかでも、お肌の左右差は出てくるんです。測定結果を見ながらお話しすると、「どうして普段の生活のことがそんなにわかるの?」というふうに言われる方もいますね(笑)。
宮崎:確かに仕事場の窓は左側にありますね……。
この結果を受けて、今後宮崎さんはどのようなケアを行なっていくと良いのでしょうか。
宮本:隠れジミが多いということは、お肌の中の水分量が少ないとは言えると思います。表面的に感じる脂っぽさは、肌の潤いとは直結していないんです。今されているスキンケアを伺っても水分量が足りていない状態だとは思うので、化粧水で潤いを与えた後に美容液で必要な栄養分を入れて、乳液やクリームで蓋をするというベーシックな3ステップをしていただけるとよいかと思います。
宮崎:今のところ(前回の記事に登場した)大出剛士さんと宮本さんのお二人に話を伺って、スキンケアについて同じことを言われているので、だんだん説得されてきました……。
宮本:例えばお水を入れていないコップにライトを当てると、コップの下までそのまま光が届きますよね。でもコップにお水を入れた状態で光を当てると、反射して光が屈折します。そのように、潤っている状態だと紫外線が皮膚の下の層まで届かないんです。年を重ねるごとにコラーゲンや潤いの生成量も減ってしまうので、スキンケアで水分を与えることが必要にはなってくるかなと思います。あとはUVケアですね。
宮崎:フジロックに行く前に聞けて良かったです(笑)。やらなきゃいけないけれど面倒だなという気持ちもあったので、まずは直近でUVケアをやらなくちゃと思いました。
宮本:インナーケアも大切です。体の内側からも水分が必要なので、宮崎さんの場合は夏場は積極的に水分を摂っていただくとよいかと思います。
長時間同じ姿勢でいたり、汗をかかないと、身体全体の血流にも関わってきますので、なるべくストレッチや運動をすることをおすすめします。睡眠についても、同じ時間に睡眠をとることを意識するなど、規則正しい生活を心がけると、肌のお悩みが改善されていくかとは思います。
宮崎:水はあまり飲まないでコーヒーばかりなので、めちゃくちゃためになります。
肌診断を終えてみて、晴れやかな表情を浮かべる宮崎さん。最後に感想を伺いました。
宮崎:肌に対してフィードバックをもらったのが生まれて初めてだったので、改善点はあったものの、意外といい結果だったなと思います。紫外線ケアをしていない自覚があったので、「やっぱりそうだったか」という感じだったんですけど、隠れジミの画像は衝撃的でした(笑)。
自分ではコンプレックスだった毛穴は意外と結果が良くて、思い込みもあるんだなと思いました。「どうせ毛穴が開いてるし、きれいになんてならないよ」と思ってしまうよりは、意外とそうでもなかったというフィードバックをもらえたのは嬉しかったです。やっぱりなんでも現状を知ることが大事ですね。
宮本:無理をせず、今日のアドバイスのうちどれか一つを始めてみるだけでもその積み重ねで肌の状態は変わっていくので、ぜひできることから始めていただければと思います。
宮崎:最近、ダメな方が伸びしろがあるというふうに考えるのが好きなんです。例えば文章については、仕事として長いことやっているから最近は伸びていない気がするし、伸びていたとしてもよくわからないんです。「だめだから頑張れ」と言われるよりも「いいんだからもっと頑張りなよ」と言われる方が、何事においてもやる気が出るタイプなのですが、さらに考えれば、あまりスキンケアをしていないぶん、「伸びしろ」があるとも考えられる。肌のケアもこれからもっと頑張れるなと、モチベーションが上がりましたね。
インタビュー・テキスト:松井友里
写真:出川光
イラスト:三好愛
編集:野村由芽(me and you)
宮崎智之(みやざき・ともゆき)
1982年、東京都出身。地域紙記者として勤務後、編集プロダクションを経てフリーライターに。新刊に『モヤモヤの日々』(晶文社)、山本ぽてととの共著『言葉だけの地図 〜本屋への道のりエッセイ』(双子のライオン堂出版部)、既刊に『平熱のまま、この世界に熱狂したい』(幻冬舎)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)、『中原中也名詩選』(田畑書店)など。主な寄稿先に『文學界』、『週刊読書人』など。犬が大好き。
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