「水」のめぐりには飲む&出す!冷えや不調を防ぐ方法って?
からだのめぐり教室
vol.5
MEGLY編集部
移り変わる季節や、自然の営みと同じように、私たちのからだもまた絶えずめぐり続けています。漢方医学ではこの「めぐり」を重視しており、滞りなくめぐっている状態が健康だと考えられています。
「からだのめぐり教室」では、からだのめぐりの仕組みや大切さを一から学び、考えていきたいと思います。教えてくれるのは、漢方医学や自然療法、食事療法からさまざまな症状の治療にあたってきたイシハラクリニック副院長・日本東洋医学会会員の石原新菜先生。第5回目は、「水」のめぐりに注目します。「水はたくさん飲んだほうが健康にいい」とよく聞きますが、石原先生によると、余分な水はからだを冷やし、さまざまな不調を招いてしまうのだとか……。とくに冷え性や低体温に悩んでいる人は、一度、「水」のめぐりを見直してみる必要があるかもしれません!
からだを流れる「水」と、冷えの関係性
漢方では、血液以外のすべての液体を「水」と呼んでいます。成人の場合、からだの50〜60%程度は水でできていると言われていますが、リンパ液や消化液、鼻水、涙、汗、尿だけでなく、からだの細胞一つひとつにも水分が含まれています。この「水」は、全身を潤す役割があるほか、からだに溜った老廃物を汗や尿で排泄したり、細菌の感染から守る役割もあります。
「冷え」は「水」が滞っている証拠
私たちのからだを維持するために必要不可欠な「水」ですが、必要な場所に必要なだけあることが重要で、過剰な摂り過ぎは「水」のめぐりを滞らせることにつながります。健康のためにとたくさん水を飲むように心掛けていても、飲んだ分を汗や尿で排泄し循環させなければ、むしろ逆効果。体内の余分な水は、目や耳の中、関節や血管、細胞の間などに溜まり、冷えやむくみなどさまざまな不調を引き起こします。
とくに「冷え」はからだに溜った水が大きな原因。水には熱を奪う性質があるため、体内に冷却水を抱えているような状態になり、自らからだを冷やしてしまうのです。お腹を触ったとき、おへそより下が冷たい人は余分な水が体内に溜っている証拠。水は重力で細胞の間を流れ落ちていき、各パーツの下の方へ集まっていきます。下腹ぽっこりや二重顎、二の腕のタプタプなども、脂肪以外に、実は細胞間に溜まった水のせいだということもあるのだそう。運動や筋トレで気になる箇所をケアする人も多いかもしれませんが、根本の「水」のめぐりを改善することも重要です。
「水」が滞りやすい人とは?
「水」が溜まりやすい人は、より意識的に水分の摂り方を考える必要があるでしょう。まずは、ストレスの多い人。疲れやストレスで交感神経が優位になると、代謝が落ち、排泄機能が弱まります。唾液が減ったり、排尿の回数が減ったり、体内の水の循環も悪くなります。また、低体温の人も要注意。私たちのからだは、体温が1度違うと代謝が12%も変わると言われています。体温が36.5℃の人と36℃以下の人が同じ量の水を飲んでも、低体温の人のほうがより水が溜まりやすいのです。さらに、溜まった水はからだを冷やし、血行を悪くするので、ますます冷えるという悪循環を招いてしまいます。
「水」がめぐらないとなにが起こる?
「水」が本来必要な場所へ行き渡らない状態、すなわち「水」がめぐっていない状態を漢方では「水滞(すいたい)」もしくは「水毒(すいどく)」と言います。「水滞・水毒」が引き起こすさまざまな不調を解説していきましょう。
水滞(すいたい)・水毒(すいどく)とは?
水のめぐりが滞ると、冷えやむくみ、頭痛、めまい、頻尿や膀胱炎などが生じやすくなります。そのどれもが体内に溜まった余分な水が主な原因です。たとえば目の中に水が溜まると、眼圧が上がり緑内障を引き起こすことも。内耳にたまると三半規管に影響が出るため、めまいや耳鳴りが出やすくなります。また、血液の中を流れる水分量が多くなると、血管が拡張するため頭痛を引き起こす場合もあります。
「水滞」のサインとなるのが、舌のむくみとお腹の音です。舌を出したときぼてっとしていて、周りに歯型がついている人は水が溜っている可能性大。また、腸に水が溜っている人は、お腹を叩くとチャポチャポと音がします。たまに「飲んでも飲んでも喉が乾く」という人がいますが、実はこれも「水滞」の症状の一つで、とくに血流が悪い人によく見られる症状です。体内の水分が偏って必要なところに水が行き渡らない「水の偏在」によって起こります。
隠れ冷え性も「水滞」のサイン!
汗をたくさんかく人は、一見「水」のめぐりが良いと思われがちですが、少し動いただけで滝のように汗が出るのは、からだに溜まった水が溢れ出ているという場合がほとんど。自分は暑がりと思い込んでいても、じつは冷え性だということもよくあります。からだに水を溜め込んでいる人は、常に冷たい水着を着ているようなもの。少しクーラーにあたっただけで寒いと感じたり、手足など末端は氷のように冷たかったりするはずです。こうした隠れ冷え性の人は、お腹を触ると冷たいことが多いのも特徴。からだの中心は冷えているのに、表面はほてりやのぼせを感じることもよくあります。
花粉症は「水」のめぐっていない人に起こりやすい
この時期から花粉症に悩む人も多いのではないでしょうか? 実は、水っぽい鼻水の出るアレルギー性の鼻炎や、1年中鼻がぐずついている慢性鼻炎の人は、副鼻腔に水が溜ることが関係するそう。また、泡のような痰を伴う気管支喘息や、ジュクジュクとした皮膚炎なども、体内に溜まった水が外に出ようとすることで起こると考えられています。
飲んだぶんは出す&溜まる前に出すことが、「水」の滞りを防ぐコツ
からだに良かれと思ってせっかく水をたくさん飲んだのに、体が冷えたり、むくんだりしては台無しですよね。目指すべきは、必要な場所に十分に水が行き渡ったうるおいのあるからだ。「水」の滞りを防ぎ、しっかりめぐらせるにはどうしたらいいのでしょうか?
飲んだぶんは出すことを意識
まず、水は適量を飲むようにすること。1日中座りっぱなしでデスクワークをしているなら、1日に2ℓは飲み過ぎです。普段の食事からも水分は摂取できています。「頑張って飲む」のではなく、「喉が渇いたら飲む」ようにしましょう(ただし、汗をかく暑い時期はこまめな水分摂取を)。飲んだ水を体内に循環させ、必要な場所に必要なだけ届けるには、飲んだぶんしっかり出すということもポイントです。お風呂に運動、サウナや岩盤浴などで汗を積極的に流すようにしましょう。また、日頃から冷たい食べ物・飲み物は控える、腹巻をするなど、からだを冷やさないことも大切です。「血」は、余分な水分や老廃物を回収・排出してくれるので、からだを温め全身の血流をよくすることが、「水」のめぐりをよくすることにもつながります。
雨の日の前日はサウナへ
からだに水が溜まっている人は、梅雨や台風の時期などに頭痛やめまいといった不調が起こりやすいようです。これは、空気中に水分が多くなることで、通常皮膚から蒸発している水分が外に出にくくなってしまうため。すると、からだに溜まった余計な水がからだにむくみを引き起こし、血管を拡張させたり、内耳に影響を与え、頭痛やめまいを引き起こすのです。
こうした症状に悩んでいる方は、明日は雨だとわかったら、前日のうちにサウナなどへ行くのがおすすめです。汗をかくことで前もってからだの余計な水を出しておけば、雨の日を上手く乗り越えられるはずですよ。
「水」のめぐりをよくする食べものを摂る
からだの中の余計な水を尿として出すことも重要です。そのためには利尿作用の高い食べ物・飲み物を積極的に摂るようにしましょう。スイカやきゅうりなどの瓜類、ハトムギのほか、小豆もおすすめです。体内の余分な塩分を排出するカリウムや、利尿作用があるサポニンが豊富で、むくみの解消には効果てきめん。ほかにもアントシアニンポリフェノール、鉄分、タンパク質、食物繊維など、からだに嬉しい栄養素が豊富です。小豆はあんこのイメージが強くカロリーが高いと思っている人も多いのですが、実際は低カロリー。そのまま煮て、カレーや煮物などの料理で取り入れるのも◎。煮汁までしっかり飲むようにしたいですね。
「水」のめぐりをよくして、心もからだもカラッと気持ちよく
冷え性や低体温、花粉症や鼻炎などの不調は、長年悩んでいるという人も多いのではないでしょうか。石原先生によると、不調が出ている場所のケアに必死になるよりも、からだ全体の「水」のめぐりに目を向けてみることで、根本から不調を改善できることがあります。
「からだがジメジメしていると、心までどんよりしてしまいがちです。余計な水を流して、本当に必要な場所に『水』がめぐり出せば、からだも心もカラッと軽くなるはず。気持ちよく生活できるようになりますよ」
「水滞」による不調に悩んでいる人は、「水」のめぐりに意識を向けて、雨の日の前日には汗を流す、日頃からからだを温めるなど、上手にコントロールながら、からだのジメジメを追い出していきましょう!
監修:石原新菜(イシハラクリニック副院長・日本東洋医学会会員)
取材・文:秦レンナ
イラスト:ナガタニサキ
編集:石澤萌(sou)、野村由芽(me and you)