炭酸を化学式でひもとこう、実はからだをつくる大事なものだった!
身近なものだけど、実はあまりよく分からない、「炭酸」を知って活用していくための場所。
炭酸のちから
炭酸飲料や炭酸入浴剤など、暮らしに身近な「炭酸」は、実は私たちのからだのなかにも存在しているもの。そして、すこやかさにアプローチする力も持っているのです。炭酸がどんなものなのか化学式からひもとき、私たちのからだにどんな効果をもたらしてくれるのかお伝えしていきます。化学式、と聞くと少しとっつきにくい印象かもしれませんが、実は見たことがある記号も登場します。
炭酸とは?化学式をみてみる
炭酸は「水に二酸化炭素が溶けたもの」です。
……と言われても、あまりピンときませんよね?
では、こちらならどうでしょう。
CO2+H2O ⇄ H2CO3
突然化学反応式が出てくると少し身構えるかもしれませんが、実は見たことのあるものもありませんか?
CO2は「二酸化炭素」、H2Oは「水」、そしてH2CO3は「炭酸」の化学式。
つまり「CO2+H2O ⇄ H2CO3」は、「二酸化炭素と水が反応して炭酸になる」ということを表した化学反応式なのです。
CO2=二酸化炭素は空気中に含まれており、H2O=水は自然界に存在しているもの。そのふたつが溶けあうことで生成される「炭酸」、これが実は私たちのからだで大切なはたらきをしているんです。
炭酸の働きを知ろう
では炭酸は、体内でどのような働きをしているのでしょう。
まずは、呼吸をする仕組みから説明していきます。
人は、呼吸をし、息を吸ったときに酸素を肺から取り込み、肺の中の毛細血管の中にある赤血球がその酸素をもらいます。そして、赤血球は血管を通り、食事などで体内に入った栄養と酸素を各組織へ運びます。
酸素は、栄養と一緒に使われ、組織が筋肉となり力を出して働いたり、エネルギーをつくったりするために使われます。
そして、栄養や酸素から二酸化炭素がつくられます。この二酸化炭素は老廃物として体外に排出する必要があるため、肺へと運ばれるのですが、その際、血液中で水と反応し、いったん「炭酸」になるのです。この炭酸は、血液中のph(酸性とアルカリ性のバランスを示す指数)を保つために、さらに「重炭酸イオン(HCO3–)」と「水素イオン(H+)」に分解され、肺にたどり着きます(図1)。血液中のphが正常に保たれていないと、からだの代謝機能がはたらかず、不調をきたしてしまいますので、このように血液中の平衡(へいこう)がとられることは、とても大事な働きです。
肺では、重炭酸イオンと水素イオンが結合し再び炭酸になり、それが二酸化炭素と水に分解され、二酸化炭素が呼気として排出されるのです(図2)。
このように炭酸は、酸素を取り入れて二酸化炭素を排出するという、私たちのからだのめぐりをつくる要素になくてはならないものなのです。
炭酸が身体にもたらす効果
炭酸が体内の組織の中でどのように働くのか、なんとなくわかったでしょうか?ではここからは、炭酸がからだによい効果をもたらす理由について説明していきます。
炭酸が私たちのからだを健やかにしてくれる役割として注目したいのが「血管拡張効果」と、それによる「血行促進効果」です。
実は、前述した仕組み(取り込んだ酸素が血液から組織に運搬されてエネルギーとなり、それによって生じた二酸化炭素が血液を通じて排出される)を活かして炭酸をとり入れると、血管の拡張効果でからだのめぐりにつながるのです。
たとえば、入浴施設などにある炭酸泉に入った場合、皮膚から炭酸の分子が浸透し、血液の中に入ります。すると血液中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、二酸化炭素濃度が上昇。「老廃物(二酸化炭素)がたくさんあるから、もっと血液を送り込んで老廃物を洗い流す必要がある」と血管が感知し、血管を拡張して血流を増すように指令を出します。
つまり、組織に炭酸が取り込まれると、その場所でたんぱく質やエネルギーが作られ二酸化炭素が増えるので酸素や栄養が必要と認識して、血管を広げるため血流が増し、結果的に血流が促進される、というシステムになっているのです。
血流が促進されるとからだが温まりやすくなり、冷え性をはじめ、肩こりや腰痛が和らいだり、免疫力が高まったりします。また、肌のくすみが解消されやすくなり、血色がよく見えるなど、うれしい効果がたくさん生まれます。
この効果は炭酸と人間のからだの仕組みが出会ったことで生まれる自然なチカラ。血流が促進されるとからだがめぐり、からだだけではなくこころも生き生きとしていきます。
今回は、炭酸の成り立ちを化学式からひもとき、からだの仕組みを通してその効果を解説しました。
炭酸をもっと身近に、楽しく。みなさんの暮らしに炭酸がそっと寄り添えますように!
文/編集:MEGLY編集部
イラスト:小林マキ
監修:前田眞治
<参考文献>
『この一冊で炭酸パワーを使いきる!』前田眞治著
(文庫本:青春文庫:単行本).全172ページ.青春出版社.東京.2013.9.20